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起業に向けて勉強しとこ 日本の戦略「成長戦略実行計画」議論編 1

はじめに

以下で書いた日本成長戦略の続きです。

www.donokamoto.info

 経済産業省産業構造審議会 成長戦略部会で上記で課題として挙げられている「日本企業のマークアップ率の向上」「既存企業とスタートアップとの協働」「パイオニア企業を集中支援するという新たな産業政策」について偉い人達の討議内容を見つけましたので、今回はその第一回目の内容について勉強したいと思います。

全体的な問題意識

以下各委員の発言内容を私なりに要約したものです。

株式会社デンソー社長   有馬委員

・売上5兆円、従業員17万人、70年かけてこつこつ積み上げてきたが、典型的な物作り企業の枠を超えていない。

・例えば、現在世界で爆発的に使われている、QRコードデンソーが発明・開発したものだが、特許を開放した事で一銭の稼ぎにもなっていない。

・現状の枠組みの中以外での儲け方を知らないデンソーはまさに課題先進企業である。

 学習院大学 教授 伊藤委員

アメリカ、ドイツ、日本等の先進国にはもう高度成長の種はないので新興国に目を置いた成長戦略が重要である。

・日本企業はスピードが遅い。他国グローバル企業は日本企業が10年かかるところを2年でやる。特に今の技術と構造変化の中では大きな課題となる。

・産業構造が大きく変わる中、上流から下流バリューチェーンの中で、利益を生み出す部分に日本企業は参画できているか。

株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ 仮屋薗委員

・日本のスタートアップへの投資はここ6年間で6倍に成長、このリスクマネーの半分が大企業で、オープンイノベーションによる投資が進んでいる。

・一方日本ではM&Aが少ない。米国1,500に対し、2桁前半。協業により新しい種を見つける事には意識が向き始めたが、企業価値を高めるM&Aにはまだ意識が少ない。

・オープンイノベーションによる売上、マークアップ率を上げるという意識は高まっているもの、究極の目的である企業価値の向上に対して、もう一歩踏み込む必要がある。

花王株式会社社長 澤田委員

・付加価値の本質をどう捉えるか、そしてその変化をどう捉えるか。これが非常に重要。

・スタートアップやベンチャーとの協業はすでに積極的に取り組んでいる。しかし、これまでは入り口の技術開発側が多かった。

・昨今は、自分達が作り上げた技術をどう世の中に展開していくか、すなわち商品を出す前に技術をオープンにして、色々意見を貰うという事をやっていて、これを成功に結び付け、付加価値の高い商品を展開していきたい。

KDDI株式会社社長   高橋委員

・5Gをいかに活用していくかというところがポイント。いろいろな産業とのパートナーシップによって、5Gのネットワークを使っていただきながら、マークアップ率をいかに上げていくのかということが重要な時代になってきている。

・スタートアップへの投資をやってきている中で気を付けている事は、投資した先からベクトルを自社に向けさせて利益を上げるということではなくて、スタートアップ企業のベクトルに合わせて、大企業のアセットを提供することによって、一回りも二回りも大きな活動にしていく事。

新興国はもの凄く成長が早い。何も阻害するものがない、止めるものがないから、どんどん新しいものへチャレンジしていく。

 ユニゾン・キャピタル株式会社 代表取締役   林委員

M&A市場の懐の深さが、日本では十分ではない。100 億円投資して 200 億円で売却するなら比較的日本の大企業に買ってもらいやすい。ところが、500 億円の企業を買っ
て1,000 億円で売却しようとすると、途端によし買ってやろうという会社が激減する。

・以前から企業の成長をプロデュースするために必要な資源、リソースはほとんどが外部から調達している。今後はそのリソースの中にデジタルテクノロジーを中心に、ベンチャー企業の力をもってきたいが、私どもだけでは、どんなベンチャーがどのように役立つのかということについての目利きをする力がない。

READYFOR株式会社 代表取締役CEO   米良委員

・本当に好きでいてくれる顧客を見つけ出して、ある種のブランドとか信頼をベースに、自ら参加する等の体験をつけることによって、単価を上げていけるような挑戦をしていきたい。(例えば、カルビーの限定ポテチ復刻版)

・日本はやはり社会課題先進国。課題現場の生の声と大企業の持っているリソースをくっつけて事業展開して、課題解決のイノベーションを実現していきたい。

ベンチャー企業が大企業のトップと会う機会がない。大企業の新規事業部の方と会うが、それだとなかなか先に進まない、決まらない。トップ同士で一緒に議論して物をつくっていくような場が必要。

マークアップ率の向上

花王株式会社社長 澤田委員

・シャンプー、コンディショナー、化粧品等、性能、機能を上げれば結構高い価格で売れていた時代があった。でも、今は、例えば 10 年、20 年前の2倍、3倍の性能が出た
としても、高く売れない。今後は、地球環境、社会に役に立つかというエシカルな付加価値が非常に重要。

・一方、自分事の商品は結構高く売れる事がわかっている。例えばシャンプー、コンディショナーは今高低価格二極化。自分の生活、ライフスタイルに合うような自分事コンセプトの製品。個々にとっての価値をどう捉えるか重要なポイント。

・付加価値をどのように感じてもらうかの価値の伝え方を工夫しないといけない。広告宣伝のあり方は重要で、SNSの活用はポイント。企業が一方的にいいのだというのではなくて、第三者のいいよという声を大切にする、そういう形でのデジタルの活用。

株式会社デンソー社長   有馬委員

・自動車業界はマークアップを上げる事に非常に苦労している。コネクテッド、電動化、自動運転等の技術があって、これらを使って価値を上げようと思っても、その対価としてそのまま車両価格は上げられない。部品メーカーがこれまで成長してきたビジネスモデルの方程式ではもたないのではと感じる。

・これからはソフトリッチな部品を提供しないと車は動かないので、そういうものにシフトしようとしています。でも、ソフト開発には相当なコストがかかるにもかかわらずただでしょみたいな土壌がある。開発コストが回収できないとなると、どのメーカーも破綻する。

株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ 仮屋薗委員

インフルエンサーによるストーリーづけ、これはこのようなものだから価値があるのだよということで、価格ではない、ストーリーに共感した上での購買、このマーケティング手法が主流になりつつあるとトレンドを見ている。

・物づくりのタイミングからスタートアップと一緒に協業していくというところから、出口まで見据えた一気通貫での協業連携というのは非常に重要で、そこにはデジタルイノベーションマーケティングに入ってくる。

・植物由来の新素材のメーカーさんとゴールドウインが共同してつくったムーンパーカーという製品。ムーンパーカーは月面でも着られるぐらいのすばらしいものというストーリー。価格はマウンテンパーカーの10倍。これがとうとう発売になる。

KDDI株式会社社長   高橋委員

・面積で考えるようなマークアップの考え方もある。通信をいろいろな産業に溶け込ませてと言ったがサスティナブルにお客様に使っていただくという付加価値、これもマークアップの一種。

まとめ

想像以上に面白かったです。私が一番驚いたのはQRコードデンソーの発明で、しかも、一銭も儲けていない事でした。もし、デンソーが特許とって、商業用だけでなく、一般消費者の利用シーンを想像して、あらゆるIT関連企業に売り込みをかけていたら、デンソーはどのぐらい儲けていたのでしょうか。現代の日本企業の課題がこの事例に集約されていると感じます。

自前主義からの脱却、オープン化、協業、いずれも日本人/日本企業には不得意な分野のような気もします。だからこそこの領域でこれをサポートするイネーブラーを作る事にはチャンスがあるかもしれませんね。

起業に向けて勉強しとこ 日本の戦略「成長戦略実行計画」編

はじめに

起業とは自分が重要と感じる課題解決の為に行うものだと考えます。でも、その解決しようとしている課題が、社会にとっても重要な意味を持つものでなければ、継続的な成功は実現できないと思います。

よって、起業のタネを考える前に、現代の日本社会で、何が重要な意味を持つ課題なのかを理解する事が重要だと考えました。

そしてたどり着いたのが、政府の各省庁が出している「戦略」です。ここには、官僚・政治家・民間が日本社会の各領域の現状をどのように捉え、どう解決していこうとしているかが包括的に書いてあり、効率的に日本社会の課題を勉強できる良い素材だと感じました。

ビジネスアイデアのひとつでも浮かべばラッキーという軽い気持ちで勉強したいと思います。

 

日本の行政機関

日本には、1府11省2庁の行政機関があります。で、各々が戦略らしきものを作っています。

私がまず知りたいのは経済関連ですので、内閣府の経済再生本部や経済諮問会議が管轄していて、令和元年6月21日に閣議決定されたという「成長戦略実行計画」について見てみました。

成長戦略実行計画目次

この戦略の構成は以下のとおりで、本文48P+行動計画12P=60ページあります。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/ap2019.pdf

第一章 基本的考え方

第二章 Society5.0の実現

 1.デジタル市場のルール整備

 2.フィンテック/金融分野

 3.モビリティー

 4.コーポレートガバナンス

 5.スマート公共サービス

 6.次世代インフラ

   7.脱炭素社会の実現を目指して

第三章 全世代型社会保障への改革

 1.70歳までの就業機会確保

 2. 中途採用・経験者採用の促進

 3.疾病・介護の予防

第四章 人口減少下での地方施策の強化

 1.地域のインフラ維持と競争政策

 2.地方への人材供給

 3.人口急減地域の活性化

 4.観光立国の推進

成長戦略実行計画各章要約

各章の認識課題のみを3行に要約してみます。(実行計画は本文をご参照下さい)

第一章 基本的考え方

課題:

日本企業は稼ぐ力(売値-コスト)が弱い。人材の教育・流動・兼業を推進し、デジタル技術とデータを活用しながら、様々な発想や異質なアイデアを価値に変換すべき。また、閉鎖的な自前主義を脱し、協働やM&Aによる新規事業進出も必要。

第二章 Society5.0の実現

これはまずSociety5.0とは何かを理解せねばなりませんね。内閣府の科学技術政策によるとSociety5.0とは以下のようなものだそうです。

これまでの情報社会(Society 4.0)では知識や情報が共有されず、分野横断的な連携が不十分であるという問題がありました。人が行う能力に限界があるため、あふれる情報から必要な情報を見つけて分析する作業が負担であったり、年齢や障害などによる労働や行動範囲に制約がありました。また、少子高齢化や地方の過疎化などの課題に対して様々な制約があり、十分に対応することが困難でした。

Society 5.0で実現する社会は、IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服します。また、人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行車などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服されます。社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重し合あえる社会、一人一人が快適で活躍できる社会となります。

これだけで5.0を理解できるとは思いませんが、私が感じるのは、モノの発する情報が処理され繋がってくるのが大きな違いかなと思います。

課題:

5.0実現に向けては、①サービスやモノのデータ化とその一元化に向けた実装、②公正な競争を促す為のデータやサービスを独占する存在への規制、そして③連動をスムーズにする為の縦割りの法体系の整備が必要。

第三章 全世代型社会保障への改革

課題:

人口減少しているが、健康で働く意思のある高齢者は増えており、彼らに社会保障の担い手にとして働いて貰う事が必要。また、雇用の受け皿である企業は、高齢者の雇用を促進する為、採用制度及び評価・報酬制度の見直しに取り組む事が必要。

第四章 人口減少下での地方施策の強化

課題:

 「まず、重要基盤サービスでありながら経営悪化している乗合バスと地域銀行を統合し、破綻を防ぐ。次に、地域経済に消費と雇用の好循環をもたらす為、都市部からの人材還流とデジタル化を促進し、地域中小企業の生産性向上と事業継続を実現する。」

まとめ

都市部においても、地方においても、様々な発想や異質なアイデアを価値に変換できる企業を増やしていかなければならない。その為のアイデアを生み、実装する為に、必要なあらゆるリソース(人、情報、金、モノ)を、クローズからオープン/共有にしていくという事なのでしょう。

例えば、単純なもので言うとシェアオフィスなど、すでに具体化されているものも多くあると思いますが、とにかくこのオープン化の流れを加速するイネーブラー(仕組みやそれにまつわるハードとソフト)にビジネスチャンスがあるかもしれません。

超近くにいた超ブラック社員

はじめに

前回ブラック企業での就業体験から学んだ事について書きました。

 

www.donokamoto.info

 

ブラック企業で働くのは最低だなと思う一方で、経営者から見ればブラック企業の社員管理法は、極めて合理的だなとも考えていました。

 

私の身近で起きた事件を中心に、その考えに至った理由を書きます。

私が遭遇した超ブラック社員

これは、私が上記のブラック会社に入る少し前、実家に戻っていた時の事です。

父が雇った社員

当時、私の父は単身者向けアパートを所有・運営していました。アパートは6階建ての寮タイプで、部屋数は50-60程度、大浴場や食堂もついており、比較的大きな規模でした。建設した当初は、上手くまわっていたものの、この頃には、引き合いが減り、父は経営に苦労していました。

そこで、父は、アパートの運営管理と賃貸営業の目的で、従業員1人雇う事にしました。応募者の中から、父が選んだのは、年齢40歳の女性で、直近は大手製鋼会社で経理を10年程勤めていたという、信頼できそうな人でした。

ゆるい管理

アパートの運営には、営業、業者の管理・支払い、入居者からの入金等、色々な業務があります。この社員が入社した当初は、父は頻繁にアパートに行き、こまめに指示を出し、定期的に報告を求めていたようです。他に薬局を経営していた事、病気がちであった事もあり、父がアパートに行く頻度は次第に減っていきました。結果的に、金の流れ以外は、この従業員に任せる部分が増えていきました。

不審な手紙

数か月後、入居者数は減っていないのに、アパートの各階にある自動販売機の売上が少しづつ低下しているという話を父から聞きました。自動販売機の売上と聞くとたいした額ではないように感じますが、工事現場等で働いている男性が多いこの寮では、酒の販売が多く、結構な助けになる現金収入でした。当然、父は、この女性社員にもその現象について話をし、理由について調べるよう伝えていたようですが、納得いく理由は得られないままでした。

この頃から、病気がちの父のサポートになればと私もアパートに足を運ぶようにしました。特に、自動販売機からの収入が減っている件については、アパート管理人やこの従業員にも直接伝え、不審な点はないか等の確認も行いました。

父の周りで異変が起き始めたのは、この頃だったと思います。父が経営している薬局に嫌がらせの手紙が送られたり、薬局を閉めた後のシャッターに脅迫するような紙が貼られたりする事が起き始めました。映画やドラマで見る、新聞紙の文字を切り取ってつなぎ合わせて作った文章で「横暴な〇〇は薬局を辞めろ」等の文章が書いてありました。

父は警察に相談しましたが、そんな事をされる心あたりが全くありませんし、手がかりなく、犯人が捕まる事はありませんでした。

夜中に爆音

それから2-3週間後の夜中2時頃、家にいる時に、突然「ドーーーン!」と家の中にいても感じる程の衝撃とともに爆音が聞こえました。家の駐車場に車でも突っ込んだのかと思い、窓から外を見ると、父の車のボンネットと屋根が大きな炎で燃えています。消火せねば家が燃えると思ったので、とりあえず外に出ました。どうしてよいかわからず右往左往していると、同じく起きてきた隣の家の人が、消火器を持ってきてくれて、消火してくれました。

すぐに、警察に連絡、現場検証等で家に10人ほどの警察官がやってきました。朝日の中、改めて見てみると、車だけなく駐車場の壁も、真っ黒に焦げていました。警察によれば火炎瓶が投げられたとの事でした。

家に火炎瓶が投げられ、警察官が家で現場検証している、という目の前のシーンは十分に衝撃的でしたが、この時点で犯人は捕まっておらず、この犯人が、更にエスカレートして父や自分の命を狙ったりしないのだろうかと恐怖を強く感じました。

事件以降、薬局は一時閉店、アパート運営もその従業員にまかせ、父も私もあまり外に出かけないようにしていました。その間、父と犯人について何度か話をしましたが、父にはそんな強い恨みを買った覚えはなく、見当もつきませんでした。

犯人

それから、ひと月ほどすると、犯人が捕まったとの連絡がありました。火炎瓶を投げた犯人は、アパート管理の為に雇った従業員の同居人の男だったのです。そして、自動販売機の売上金を横領していたのは、この従業員でした。この女は、父が現場にあまり来ない事を良い事に、男と共謀し、自動販売機の金を横領を始めた。しかし、父が変化に気づき、疑い始めたので、横領が露呈する事を恐れたこの二人は、父の意識をそらすため、誰かが、父に恨みを持ち、攻撃しているという状況を作り出し、事業を全て手放す事を目論んだというのです。

ごく普通の真面目そうなあの従業員は、事件後も何食わぬ顔して、父にも、私にも会っていました。話を聞いた時に立った鳥肌の感覚は今でも覚えています。

まとめ

この強烈な事件の後、私は前述のブラック企業に入社する事になるのですが、入社した後に考えたのは、もし、父がブラック企業の社長と同じように、長時間拘束、多くルールと徹底順守、ノルマのプレッシャーで、徹底管理していたら、この従業員が自動販売機の金を盗む事はなく、あんな犯罪に発展する事はなかったのではという事です。

この従業員は酷い例ですが、私も含め、多くの人間は、本質的に、欲深く、怠け者で、楽して自分だけ稼ぎたいと考えています。こういう人間達を、管理し、自分の組織の利益の為に献身的に働かさなければならないのが経営者です。

そう考えると、ブラック企業のマネージメントは、脆弱な中小組織が、低コストかつ短期的で成果を出させる為に考え出された、合理的な人材マネージメント方法ではないかとも思うのです。

もし、私が父のように起業するなら、ブラック企業にして、徹底的に社員を管理するかもしれません。